会長挨拶
このたび京都府病院協会会長を拝命いたしました、京都中部総合医療センターの辰巳哲也です。長い歴史を持つ京都府病院協会ですが、私は平成26年より理事として入会させて頂き、副会長時代も含めてこれまで諸先輩の先生方に多くの薫陶を受け、大変お世話になってきたことを感謝しています。会長をお引き受けすることとなり身が引き締まる思いでいます。新執行部ですが、副会長は京都第二赤十字病院長の小林裕先生と京都桂病院長の若園𠮷裕先生にお願いし、会計担当理事は引き続き京都府立洛南病院長の山下俊幸先生にお引き受け頂きました。
2019年12月以降、中華人民共和国から広がった新型コロナウイルス感染症は全世界で感染が拡大し、多くの感染者や死者が出て、世界経済にも甚大な被害が生じています。京都府でもクラスターの発生や院内感染が発症して、感染症指定病院だけではなく、大学病院、救命救急センターを中心に増加する感染症患者への診療を行ってきました。緊急事態宣言が解除され少しずつ日常を取り戻すことができつつありますが、ウイルスが消滅したわけではなく、基本的な感染対策と第2波、第3波への備えを怠らないことが必要かと考えています。
Beforeコロナの時代、国はこれまでの「2025年問題」から「2040年問題」(現役世代人口が急減する高齢化社会での社会保障制度の維持)へと展望を切り替え、地域医療構想の実現、医師・医療従事者の働き方改革の推進、実効性のある医師偏在対策を三位一体で推進しようとしてきました。今回の診療報酬改定での大きな焦点の一つに、働き方改革が要件の地域医療体制確保加算がありましたが、多くの病院は新型コロナウイルス感染症の対応に追われて、それどころではなかったのではないかと思います。Withコロナの時代、常に感染症のリスクを念頭に置きながら経済活動と生命健康を守る感染症への取り組みを両立させる必要があります。国難とも言える今回の感染症危機を経験して、病床機能の再編や公立・公的医療機関の再編統合問題、専門医シーリング制度を含めた医師数・医師偏在の問題、働き方改革の進め方などを改めて考え直さなければならないように思います。今後、ICTを駆使した社会生活が定着し、医療へ飛躍的に応用されていく時代を想定した対応も必要であると思います。
京都府病院協会では新型コロナウイルス感染症に立ち向かい、職員が命懸けで戦ってきた会員病院へのアンケート調査を5月から実施し、現在も継続して行っています。その結果からは多数の病院が外来患者や入院患者が減少し、医業収益が大幅に減少しています。また、急性期・回復期・慢性期・小児周産期・精神科を問わずどの医療機関も地域医療を守るため、院内感染防止や発熱患者への対応を含め、日々尽力している現状があります。政府も二次補正予算にて医療機関への財政支援を予定していますが、すべての病院が経営破綻に追い込まれないような配慮と継続した医療提供体制への助成を求めます。地球温暖化が進む中、大雨や地震などの自然災害がなくなることはありませんし、さらなる未知のウイルスの登場による感染症危機も想定しておくべきです。Afterコロナの時代へ向けて、今回の教訓を活かし新たな創造力を持って、非常時にも対応できる2040年を見据えた医療の提供体制への改革が必要であると考えています。
京都府病院協会は京都市内だけではなく、北部から南部に及ぶ京都府全域における医療圏の病院が所属されています。設立母体も様々で各病院が抱える課題はそれぞれ違いもありますが、まぎれもなく京都府における医療の提供体制を支える病院ばかりです。互いの立場を尊重しながら、医療情報を迅速に共有して皆様と議論を行い、行政ならびに医療関係団体に協会としての意見を強く発信できるよう頑張りたいと思います。すべての会員病院の立ち位置に真摯に向き合い、会長職を誠実に行っていきますので、今後とも皆様の温かい御指導、御鞭撻を賜りますようどうか宜しくお願い申し上げます。
会長 辰巳 哲也